商品開発のキッカケ
『昔と比べ、図面の「価値」が、下がっている気がする。』
それは、長期間、設計事務所を主宰している建築士が、会話の中で発した言葉でした。そして、その根拠として挙げられたのは、手描きの図面とコンピューターによる図面との違いでした。
彼が言うには、図面を手で描いていた時代の方が、クライアントにその図面の「価値」が伝わっていると感じることが多かったと言うのです。
コンピューター普及以前、建築・デザインの現場では、図面は全て手で描かれていました。手描きの線からは、そこに掛けられた膨大な時間や労力が想像しやすく、それを手掛りとして、図面の「価値」が、クライアントにも伝わりやすかったのではないか、というのです。
現在、図面のほぼ全ては、コンピューターを使用して作成されます。そして、完成した図面は、プリンターによって紙に印刷されます。出力された均一な線から、そこに費やされた、時間や労力を想像し、そして「価値」を感じることは、クライアントにとって難しいのかもしれない、というのは説得力のある話だと思いました。
この対話を終えた後、長い間、この問題について考えました。
もし、過去の時代と比較し、図面の「価値」が下がっているという現状があるとすれば、それは、どうすれば改善できるのか?現代の設計者・デザイナーの方々が、時間と労力をかけて制作した図面の「価値」を、どうすれば、より高めることができるのだろうか?
これが、この図面ケースを開発するキッカケでした。
日本の伝統にインスピレーションを得たデザイン
図面の「価値」を、高めるにはどうすればよいか?
様々な思考を重ね、たどり着いたのは、まず、自身が図面を今までよりも大切に扱う、ということでした。複製可能なコンピューターで描かれた図面は、制作した本人も気軽に扱いがちです。それを正し、制作者自身が図面を大切に扱うことで、その「価値」が伝わると思いました。さらに、図面に特別な「思い」を込めているということを、目に見える形で、クライアントに表現するべきだと思いました。図面に込めた「思い」がクライアントに伝わることでも、図面の「価値」が高まると考えたのです。
検討を重ねる中で、difott®が注目したのは、プレゼンテーションの際に欠かすことのできない道具である図面ケースでした。一般的に図面ケースは「収納した図面を保護すること」のみを目的として作られています。そこに、新しいアイデアを加えることで、図面を今まで以上に大切に扱い、そして図面に込めた「思い」をクライアントに伝えるプロセスを、プレゼンテーションの場面に導入できるのではないか、と考えたのです。
様々な可能性を検討する中で、日本の伝統である風呂敷とその使い方が思い浮かびました。
古来より、日本には、贈り物を大切に風呂敷に包んで運び、それを、受け取る相手の前で丁寧に取り出す、という伝統がありました。それは、まさに、物に込めた自身の「思い」を相手に伝えるための行為だと言えます。
この風呂敷の使い方の特徴である「大切に包む」「丁寧に取り出す」という行為に着目し、図面ケースのデザインを発展させていきました。
そして、何回もの試行錯誤を経て、図面ケース「プレミアム・プレゼンテーション®」は完成しました。
「思い」を伝える機能
大切に包む、丁寧に取り出す
この図面ケースは、内部図面収納と、外側カバーという、ふたつのパーツで、構成されています。
内部図面収納は、広げると1枚の大きな布です。その、四辺を折り曲げ、紐で固定することで、図面を「大切に包む」ことができる構造になっています。加えて、外側のカバーでも図面を大切に保護します。図面をニ重に包み、とても大切に扱うことで、あなたの図面が、「価値」のあるものであることをクライアントに伝えることができます。
プレゼンテーションの場面で、図面を取り出すプロセスも、この図面ケースに特有のものです。
クライアントの前で、まず、外側のカバーを外します。すると、丁寧に折りたたまれ、紐で固定された内部図面収納が現れます。そして、内部図面収納を固定している紐をとき、四辺の布を一枚ずつ丁寧に開いていきます。四辺の布が全て開かれた時、あなたの図面が、クライアントの目の前に現れます。
この、風呂敷の使い方からインスピレーションを受けた、「丁寧に取り出す」という行為によって、あなたの図面に込めた「思い」をクライアントに伝えることができるのです。
収納した図面を取り出して、ただ渡すのではなく、あなたの図面が大切に扱われている状態を伝えること。ケースから図面を丁寧に取り出すという行為を、プレゼンテーションの場面に持ち込むこと。この一連のプロセスによって、あなたの図面に込めた特別な「思い」が、クライアントに伝わり、図面の「価値」を高めるのです。
社会全体における図面の価値を高める
difott®には、このプロダクトに込めた3つの願いがあります。
- 個々のプレゼンテーションの場面で、この図面ケースが活用され、設計者・デザイナーの方々に喜んでもらうこと。
- 図面に込めた「思い」がクライアントにしっかりと伝わり、喜んでもらうこと。
- プロダクトが広まり、社会の中における図面の「価値」が、さらに高まること。
この図面ケースで、皆が笑顔になり、
建築・デザインの世界に貢献が出来ればと考えています。